肝臓がん
肝臓がん
肝臓は右の肋骨(ろっこつ)に守られるようにして存在するヒトの体で最も大きい臓器で、体重の約50分の1を占めています。肝臓の主な働きは3つあります。1つ目は、私たちの体に必要な蛋白の合成・栄養の貯蔵、2つ目は、有害物質の解毒・分解、それと3つ目が、食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌です。
私たちが食べたものは胃や腸で吸収されやすい形に変えられた後、肝臓へ送られます。
肝臓でいろいろな成分に加工されると、動脈を通って必要な場所に配られていきます。
例えば、食事などからとった糖質は、グリコーゲンとして肝臓に蓄えられ、夜間にエネルギー源として血中に放出されます。利用されて不要になった老廃物は、今度は静脈を通って肝臓へ戻され胆汁へ排泄されます。
その老廃物の一部は再び吸収されて肝臓で再利用されます。
このように肝臓は栄養素の生産、リサイクルの中心となっています。
肝がんには、肝臓そのものから発症した原発性肝がんと、他の臓器のがんが肝臓に転移した続発性肝がん(転移性肝がん)があります。
原発性肝がんの約90%が肝細胞がんで、約10%が胆管細胞がんです。
一般的に肝がんというと肝細胞がんを指しています。
日本では年間約3万1000人が肝がんで亡くなっており、男性では肺がん、胃がんに次いで、がんによる死亡の第3位となっています。2000年前後より肝がんの年間発症率は横ばいになりつつあり、肝がんで死亡する人は減少傾向にあります。
肝細胞がんは他臓器のがんと異なり、多くは基礎疾患として慢性肝炎や肝硬変といった慢性の肝臓病があり、肝細胞の破壊と再生を長期にわたり繰り返すことが、発がんの大きな原因であると推定されています。
近年はC型肝炎の治療薬の開発などからC型肝炎が治癒する時代となり、肝臓がんが減少していると考えられます。
がんは、正常な細胞の遺伝子が傷き、がん細胞に変わることで起こります。
遺伝子が傷つく原因はさまざまです。
肝臓がんの場合、約90%の原因が「B型肝炎」と「C型肝炎」と言われています。
また最近は、「アルコール性肝障害」や「脂肪肝」など生活習慣病に起因する肝臓がんも増えています。
肝がんに特有の症状は少なく、肝炎・肝硬変などによる肝臓の障害としての症状が主なものです。
肝炎・肝硬変のために医師の診察の際に、肝がんが発見されるというケースが多くみられます。
肝炎・肝硬変の症状といえば、食欲不振、全身倦怠感、腹部膨満感、尿の濃染、黄疸、吐下血が挙げられます。
肝がんの症状として特異的なものはあまりありません。
また、突然の腹痛、貧血症状は、肝がんが破裂・出血したときに認められる症状です。しかし、これらの症状は、他の臓器の病気でもみられますので肝がんに特有とはいえません。
外科療法、穿刺療法(ここでは経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法、マイクロ波焼灼療法など、身体の外から針を刺して行う治療を一括して穿刺療法としてまとめます)、肝動脈塞栓術、放射線療法や化学療法(抗がん剤投与)などがあります。治療法はそれぞれ長所・短所があり、一概に優劣をつけることはできません。がんの進み具合、肝機能の状況などの条件を十分考慮したうえで選択されます。